頭の中だけで考えているとき、すべては理想通りに進みます。
計画も完璧、答えも出て、誰にも否定されない。
でも実際に行動してみると、想定外のことが必ず起こります。
スケジュールが崩れたり、相手に伝わらなかったり、結果が思うように出なかったり。
それは、あなたが「現実」と関わっている証拠です。
頭の中で考えているうちは、世界は安全で快適です。
しかし、行動して初めて「他者」や「環境」という現実とぶつかり、
摩擦が生まれます。
それは決して悪いことではなく、むしろ大切なフィードバック。
たとえば仕事で企画を提案しても、すぐに通らないことがあります。
でもそれは、アイデアが間違っているのではなく、
「現場には別の事情がある」という現実を知る機会でもあります。
この“ズレ”をどう捉えるかで、成長の方向が変わります。
一度の失敗で落ち込むよりも、
「実際にやってみたからこそ見えた課題」と考えた方がずっと建設的です。
頭の中では、どんな仮説も成功します。
けれど、現実はいつも少し違う。
だからこそ、試す意味があります。
うまくいかない体験は、計画を磨くチャンスです。
「なぜ違ったのか」「どこが想定外だったのか」を考えることで、
次の行動がより現実に近づいていきます。
心理学者ドナルド・ショーンは、
行動の中で学ぶことを「省察的実践(Reflective Practice)」と呼びました。
机上で考えるだけではなく、試しながら考え直す。
そのサイクルを回すことで、人は少しずつ現実と自分の間の誤差を縮めていきます。
日常でも同じです。
人間関係がうまくいかないとき、
「自分が悪いのか」「相手が冷たいのか」と考えがちですが、
実際には“お互いの前提が違う”というだけのことも多い。
それに気づけたら、もう半分は解決しています。
考え続けるより、少しずつ行動して確かめていく。
それが、現実と調和する一番の近道です。
HARMONEERの考え方でいえば、
「うまくいかないこと」は“現実とのチューニング期間”です。
楽器を合わせるように、音が合わない瞬間があって当然。
その微調整の積み重ねが、あなたの実力や信頼を育てます。
もし何かがうまくいかないなら、
「今、自分は世界と会話している」と捉えてみてください。
失敗や誤解は、世界からの返答です。
それを聞き取り、調整し、次に活かす。
それが、行動を重ねていく人の知恵です。
【出典】ドナルド・ショーン『省察的実践とは何か』(鳳書房); ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』; 河合隼雄『こころの処方箋』(新潮文庫); ジョン・デューイ『経験としての教育』(岩波書店)