はじめに
個人輸入は“グレーゾーン”と見なされがちだが、厚労省の統計を読むと、明確なルールと監視のもとで運用されていることが分かる。本記事では「薬監証明」のデータを中心に、個人輸入の実態を整理する。
1. 「薬監証明」とは何か
医薬品・医療機器・化粧品などの輸入を管理する制度で、未承認製品や処方箋医薬品の個人輸入に適用される。地方厚生局が発行し、発給件数は実態を示す重要データ。
出典:厚生労働省「薬監証明発給件数統計」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000178433_00006.html
2. 年次別の推移:増減するカテゴリ
薬監証明の発給件数は年間40万〜50万件で推移。近年の傾向:
・ED治療薬:増加傾向
・AGA治療薬:増加傾向
・ダイエット薬:減少傾向(偽造薬問題・行政の注意喚起)
・美容・ホルモン薬:微減傾向(オンライン診療移行)
・睡眠・抗不安薬:横ばい
3. 地方ブロック別の特徴
・関東信越厚生局:全国件数の約半分を占める(代行業者・港湾集中)
・近畿厚生局:美容・ダイエット薬が多い
・九州厚生局:AGA・ED系が多い
・東北厚生局:件数は少ないが増加傾向
出典:厚労省「医薬品等輸入報告書」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000178433_00006.html
4. 行政が注意喚起する「偽造薬」の現状
PMDAは、海外個人輸入医薬品に有効成分差異や健康被害の事例があると注意喚起。一方で偽造薬の検出数は減少傾向。
出典:PMDA「個人輸入医薬品に関する安全性情報」
https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/calling-attention/foreign-medicine/0001.html
5. コロナ禍による急増とその後
2020〜2021年は需要が一時的に増加(睡眠・抗不安、ED/AGA、ビタミン類)。その後は安定化。
出典:厚労省「令和3年度 医薬品等輸入報告書」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000178433_00006.html
まとめ
年間数十万件規模で行われる合法的な輸入であり、補完的医療アクセスとして定着。今後は法令理解・リスク認識・信頼情報の三点が重要。